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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

ところが、この素ッ裸にされ、そしてやがて襟に番号の入った柿色の制服を与えられる場合になっては、最早ラジウムはそのままにして置けなかった。洋服の一部分に入れて置けばよいようなものであるが、五年も同じところに入れて置くと、洋服の生地がボロボロになり、その隙間からラジウムは自然に下に転がり落ちるだろうと考えられたからだ。釦に穴を明けて置いて、その中にラジウムを嵌めこむ方法も考えたが、ラジウムの偉力は、洋服の生地も馬蹄で作った釦も、これをボロボロにすることは、まったく同じことだった。――結局、柿色の制服を着る際には、どうしてもラジウムを、あの肉ポケットに入れて、うまく独房の中へ持ち込むより外に、いい手はなかった。

こんな風で、私の肉ポケットの疾患は、更に悪化したのだった。ラジウムも適当なる時間を限って患部に当てれば、吃驚するほど治癒が早いが、度を過ごすと飛んだことになるのだった。

「おい一九九四号、出てこい」

「はア。――」

「医務室へ連れてゆくから出て来い」

「はア。――」

私はラジウムを、清掃用の箒のモジャモジャした中に隠してそれから看守に連れられて外に出た。