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かきいろのかみふうせん

柿色の紙風船

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页

青空文庫

私は白紙をクルクルと丸めると、着物の袂に無造作に投げこんだ。そして嬉しさにワクワクする胸を圧えて、表玄関の人込みの中を首尾よく脱出したのだった。

こうして私の永く研究していたスポーツは、筋書どおりにうまく運んだのだった。これで私も、末の見込みのない平事務員の足を洗って、末は田舎へ引込むなりして悠々自適の生活ができるというものと、悦びに慄えた。

「ではお前は、あのラジウムを直ぐ処分したのかネ」と訊かれるであろう。

直ぐ処分するということは、凡そ泥棒と名のつく人間の誰でもやるであろうところの平々凡々の手だ。そして同時に拙劣な手でもある。――私はそんな手は採用しなかった。

そこで私の第二段の計画にうつった。それは、大変突飛な計画だった。私はその足ですぐに日本橋の某百貨店へ行った。そこの貴金属売場へゆくと、誰にも発見されるような万引をやった。果して私は逮捕せられてしまった。それでいいのだった。

なぜなれば、即日から、身体の自由を失ったと云うことは、即日から、私は警察の保護をうけたことになるのだ。

常習万引の罪状はきわめて明白だった。予審が済むと、私の身柄は直ちに近郊の刑務所に移された。