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けいまのげんそう
桂馬の幻想
「小説新潮 第八巻第一六号」1954(昭和29)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,784 字 · 28 页
急所へきてはじめて第一感があるのでしょう」
木戸は野村をほったらかして家のまわりを歩いてきたが、何の収穫もなかったらしい。ガッカリした色が見えた。あきらめて山を降りたが、道ばたに働く農夫を見ると、我慢ができなくなったらしく、
「あの茶店に二十ぐらいの娘がいますね」
「あの出戻りかい。もう二十四五だろう」
「色の黒い、畑の匂いのプン/\するような娘ですよ」
「アヽ、色が大そう黒いな。畑の匂いだって? とんでもない。色の黒いのは地色だよ。あの出戻りは野良へでたことなんてありやしない。ヨメ入り先から逃げだしたのも野良仕事がキライだからだ」
「茶店だけで暮しがたつんですか」
「バカな」
「お金持なんですか」
「あれッぽちの畑じゃア食うや食わずだな。もっとも、出戻りはミコだ」
「ミコとは?」
「神社で踊る女だよ。占いも見るな。三年さきに死んだオフクロは占いをよく見たが、あの出戻りもマネゴトはしている」
「家族はいないんですか」
「父親は二人ぐらしだ。男の兄弟もいたのだが、あれッぽちの畑じゃア仕様がないから町へでて何かやってるようだ。山の上に離れていることだから、あのウチのことは村の者もよく知らないが、なんでも父親は四五日前から寝こんでいるということだった」