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あんないにんふうけい

案内人風景

黒部 溯郎

「文藝春秋」1931(昭和6)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,905 字 · 8 页

青空文庫

いわば第二期に位する者に、現在、芦峅の平蔵があり、大山村の長次郎があり、音沢村の助七があり、中房の善作があり、大町に玉作、林蔵、が生きていて、なお往々、登山者の案内役を務めてはいる。けれども、暫てその人たちも、劍の平蔵谷に、長次郎谷に、そのモニューメントを残して各々山人らしくこの世を去ってゆくのであろう。登山者は今少数の彼らに依って、僅かに昔ながらの山人の片鱗を見る事が出来るであろう。

山人にとっては余りにテンポが早すぎる現代である。

紺の脚袢、蒲はばきは、ゲートルに、草鞋は、ネイルドブーツに、背負梯子は、ルックサックに、羚羊の着皮は、レーンコートに移り変る。

有明口や、白馬口方面には仲々モダン化した案内人を見受ける。彼らは手製の荷杖を捨てて、ピッケルのマークを誇り合うようにさえなった。有明の中山彦一はシェンクのピッケルを有ってるぞという話まで伝わって来る。

けれども結局山人である彼らにとっては登山者の知識、技術、セオリー通り追付いてゆく術はないのだ。

登山者は実に多種多様だ。ある人に取っては彼らは、既に案内者ではあり得ない。ポーターにしか過ぎない。