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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
梅崎春生『桜島・日の果て・幻化』。同一底本的分册已合并为一书。收入:桜島、日の果て、幻化、風宴。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 页
近くで話している人々の声が、へんに遠くから聞える。耳がバカになったようだ。続いて丹尾が降りて来た。並んで待合室に入った。
「あんなこと、しょっちゅうあるんですか」
やや詰問的な口調で、丹尾は受付の女に言った。
「あんなことって、何でしょう?」
「あれを見なさい」
丹尾は滑走路をふり返った。しかし旅客機はそこになかった。乗客を全部おろした機体は、ゆるゆると引込線に移動しつつあった。丹尾はすこし拍子の抜けた表情になって言った。
「君に言ったって、しようのないことだが――」
「枕崎の方に行くんですか?」
車で航空会社の事務所まで送られた。その前の食堂に入り、丹尾は酒を注文し、五郎はうどんを頼んだ。あまりきれいな食堂ではなかった。機上でサンドイッチを食べたので、食慾はほとんどない。
「そうだよ」
五郎はうどんを一筋つまんで、口に入れた。耳の具合はすでに直っていた。
「どうです。一杯」
空いた盃に丹尾は酒を注ぎ入れた。五郎は一口含んだ。特別のにおいと味が口の中に広がった。ごくんと飲み下して五郎は言った。
「これはただの酒じゃないね」
「芋焼酎ですよ。しかし割ってある」
「もう一杯呉れ」