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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

と云われるのが怖ろしさに、遊びたい一パイの放課後を不承不承に翁の処へ通っていたものであった。実に相済まぬ面目ない話であるが、実際だったから仕方がない。

翁もこの点では気付いていたと見えて、筆者が翁の門口を這入ると、

「おお。よう来なさったよう来なさった」

と云って喜んでくれた。別に褒美を呉れるという事もなかったが、ほかの子供達とは違った慈愛の籠った叮嚀な口調で、

「あんたは『俊成忠度』じゃったのう。よしよし。おぼえておんなさるかの……」

といった調子で筆者の先に立って舞台に出る。

「イヨー。ホオーホオー。イヨオー」

と一声の囃子をあしらい初めるのであるが、それがだんだん調子に乗って熱を持って来ると、翁の本来の地金をあらわしてトテモ猛烈な稽古になって来る。私もツイ子供ながら翁の熱心さに釣込まれて一生懸命になって来る。

「そらそら。左手左手。左手がブラブラじゃ。ちゃんと前へ出いて。肱を張って。そうそう。イヨオー。ホオーホオー。ホオ。ホオウ」

「前途程遠し。思いを雁山の夕の雲に馳す」

「そうそう。まっと長う引いて……イヨー。ホオホオ」

「いかに俊成の卿……」

「ソラソラ。