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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

といった調子であった。吾々子供連は、よくその真似をしていたものであるが、その中でも一番上手なのは故大野徳太郎君であった。

◇

毎朝翁は、暗いうちに起きて自分の稽古をする。それから利彦氏を起して稽古をつける。冬でも朝食前に一汗かかぬと気持ちが悪かったらしい。これは翁の長寿に余程影響した事と思う。

◇

食事は三度三度粥食であった。

「年を老ると身体を枯らさぬといかん」

とよく門弟の老人たちに云い聞かせたそうである。

◇

筆者が十四五歳の頃であったか。

ある春の麗らかな日曜日の朝お稽古に行ったら、稽古が済んでから翁は筆者を机の前に招き寄せて云った。

「まことに御苦労じゃが、あんた筥崎までお使いに行ってやんなさらんか」

門下生は翁の御用をつとめるのを無上の名誉と心得ていたので、筆者は何の用事やらわからないままに喜んで、

「行って来まっしょう」

と請合った。むろん翁も喜んだらしい。ニコニコしてもっとこっちに寄れと云う。その通りにすると今度は両手を突いて頭を下げよと云うので、又その通りにすると翁は自筆の短冊を二枚美濃紙に包んで紙縒で縛ったものを筆者の襟元から襦袢と着物の間へ押し込んだ。