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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

押頂いて、眼鏡もかけずにスラスラと読んでから又押頂いた。

それから奥へ這入って神棚の上から一本の薪の半分ばかりの燃えさしを大切そうに持って来て、勿体らしく白紙で包んで、紙縒で結わえながら筆者の懐中に押込んでくれた。

「よう来なさった。これを上げます」

と云って女房の持って来た駄菓子の紙包みを筆者の手に持たした。筆者は懐中から薪の燃えさしを今一度引っぱり出して見まわした。恐らく妙な顔をしていた事と思う。

「これがオオダイだすな」

婆さんがうなずいた。

「うんうん。それはなあ。この筥崎様で毎年旧の節分の晩になあ。大松明を燃やさっしゃる。その燃え残りを頂くとたい。……これから夏になると雷神が鳴ります。その時にこれを火鉢に燻べると雷神様が落ちさっしゃれんちうてなあ……梅津の爺さんは身体ばっかり大きいヘコヒキ(褌引き……臆病者の意)じゃけに雷神様が嫌いでなあ。毎年頼まれて短冊とカエキ(交易)しますとたい」

やっと理窟がわかった筆者はホッとしながら、小学校の帽子を脱いでお辞儀しいしい帰途に就いた。何だか梅津の先生が非常に損な交易をして御座るような気がして、この婆さんが横着な怪しからぬ婆に見えて仕様がなかった。