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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

その云い知れぬ淋しい、悲しげな表情を見た人は皆、そうした優しい、平和を愛する翁の真情を端的に首肯したであろう。

◇

翁の逸話はまだまだ後に出て来るのであるが、それ等の逸話を、ただ漫然と読むよりも、その逸話を一貫する翁の真面目を、この辺で一応考察しておいた方が、有意義ではないかと思う。すなわち、こうした翁の強気と弱気の裏表のどちらが翁の真骨頂か。どちらが先天的で、どちらが後天的のものか、ちょっと看別出来ないようである。

しかし只圓翁の性格の表裏が徹底的に矛盾しているところに、世を棄てて世を捨て得ない翁の真情が一貫して流露していた事が今にして思い当られて、自ら頭が下るのである。聖人でもなければ俗人でもない。「恭倹持己、博愛及衆」の聖訓、「上求菩提。下化衆生」の仏願が、渾然たる自然人、ありのままの梅津只圓翁の風格となって、いつまでもいつまでも尊く、ありがたく、涙ぐましく仰がれるように思う。

現代の能楽師の如く流祖代々の鴻恩を忘れて、浅墓な自分の芸に慢心し、日常の修養を放漫にする。又は功利、卑屈な世間の風潮にカブレ、良い加減な幇間的な稽古と取持で弟子の機嫌を取って謝礼を貪る。