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きょうゆう

梟雄

坂口 安吾

「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页

青空文庫

「義龍が死期がきて、いまわに言いのこすことがあるそうだから」

伯父が使者だから二人も疑わない。そして兄の病室へはいったところを、待ちぶせた人々に斬り殺されてしまったのである。

この報をきくと、道三はただちに手兵をまとめて美濃の山中へ逃げこんだ。翌年四月まで山ごもりして、四月十八日、六尺五寸の悪霊と決戦のために山中をでて鶴山に陣をはったのである。

★

道三が義龍に城をとられて山中へ逃げこんだから、それまで鳴りをしずめていた信長の敵は色めきはじめた。織田伊勢守のように、たちまち義龍と組んで信長の城下を焼き払う者もあり、やがて一時に味方の中から敵がむらがり立つ形勢が近づいていた。

四月十八日に道三が出陣と分ったが、もし信長が道三の援軍にでかけると、その留守に彼もまた城をまきあげられる怖れがあった。誰がまきあげるか分らないが、親類も重臣も、いつ背いてもフシギのないのがズラリとそろっているのであった。

しかし、道三を助けたい。勝敗はともかくとして、この援軍に出ることをしないようでは、織田信長という存在は無にひとしいと彼は思った。

しかし、その留守に城をまきあげられるようでは、道三を苦笑させるだけの話であろう。