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もりのいしまつ
森の石松
山中 貞雄
「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页
「いらっしゃいまし」
とお静。石松が、
「お静、湯沸いてるかい」
「少しあったと思うんだけれど……」
「手桶に一杯とってくんな」
と甲斐々々しい。
次郎長が、
「石松つあん、何うか構わずに置いてくれ」
源兵衛爺さんが其の時石松に、
「石松、その人はなんだ」
「父っつあん、そんな愛想の悪い口の利き方ってあるものか。お貸元、どうか気を悪くしねえでお呉んなせえまし、何しろ年寄りで御座いますから……」
「いや、お年寄りの怒るのも無理ァねえ。爺っつあん、夜中突然に御邪魔して本当に済まなかった。あっしは清水港の次郎長って、けちな野郎で御座います」
湯をくむお静「昼間の男だ」と気付く。
石松、
「父っつあん、清水の御貸元が夜の明ける迄何処かで休みてえと仰言るから俺が家へお連れ申したんだ。御貸元、さ、どうかお上んなすっておくんなせえ」
「じゃ御免なすってお呉んなせえ」
ふと次郎長の傷に気が付いた石松、
「そうだ、傷の手当をしなくっちゃならねェ……父っつあん傷薬は何処に有ったっけ。えッ、お静、お前知らねェか」
「さあ、お隣りで借りて来ましょうか」
「いや、俺行ってくらァ、お貸元、すぐ帰ってまいります」