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もりのいしまつ

森の石松

山中 貞雄

「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页

青空文庫

お静、居ると、旅人が一人這入って来た。

「いらっしゃいませ」

「御免なすって……石松つあんのお宅はこちらで御座いますか」

「あの……兄さん今一寸留守なんですけど」

「へえ儂は駿河の清水港の次郎長の身内、大瀬半五郎と申します」

「お父っつあん、お父っつあん」

とお静、奥へ呼ぶ。

S=奥の部屋

源兵衛、石松の手紙を読み終り、放心した如く立つ。

手紙が手から落ちる。

「お父っつあん、お客様よ」

お静の呼び声に、我に返った源兵衛、店の方へ行く。

S=店

源兵衛、出て来る。

半五郎が、

「これァ石松つあんの父っつあんで御座いますか。儂は清水一家の大瀬半五郎と申します。先日、手前共親分が石松つあんに色々御厄介に相成りましたそうで、親分に代りまして厚くお礼申し上げます」

と菓子包か何かを差し出して、

「失礼で御座いますが、どうかお納めなすって……」

源兵衛、考え込んでいる。

お静が、

「お父っつあん、兄さん呼んで来ましょうか?」

半五郎がとめて、

「いえそれには及びません。実ァ儂は急ぎの用事が御座いますので、これで失礼致します。石松つあんが帰ってお出なすったら、どうかよろしくおっしゃって下さいまし。