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もりのいしまつ

森の石松

山中 貞雄

「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页

青空文庫

「直ぐ発つんだ。愚図々々しちゃ居られねえ」

「永くかかるの」

「半年は帰れねえだろう」

「出来るだけ早く帰って来てね」

「階下の親爺に聞いたんだけど、お前……?」

「だから……早く帰って来てね」

S=階下

鶴吉が訪ねて来る。

「親爺、お半さん居るかい」

「おや鶴さんかい。お半さん、鶴さんが来たよ」

S=二階

その声に石松慌てる。

「いけねえ。鶴の野郎、何しに来やがったんだ。お半、俺の来て居ること云っちゃいけねえぜ」

「何故? 何故云ってはいけないの?」

S=階下

鶴吉に荒物屋の親爺が、

「鶴さん、先刻石さんが帰って……」

「何んだ? 親爺もう知って居たのか?」

「だって先刻」

「そうなんだ。先刻帰って来たンだが、急に用事が出来て、又旅に出てしまった」

「へー?」

「お半さんに一目会って行きァよかったんだが……」

お半、二階から下りて来る。

「今日は」

「お半さん、今日は俺、石松の事でお前に謝りに来たンだ」

「なんですの、改まって?」

「もうお前の耳に這入ってるだろうが、実は先刻石松が旅から帰って来たンだ」

「そ、そうですってね」

「帰って来た事は確かに帰って来たンだが、直ぐ又その足で旅に出たんだ」