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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页
「もういいよ。そのくらいで……」
「僕は鬼神のような冷徹さでもって、ミチミの身体を嚥んだ空虚の棺桶のなかを点検した。そのとき両眼に、灼けつくようにうつったのは、棺桶の底に、ポツンと一と雫、溜っている凝血だった。――おかしいわネ。そのころあたりはもうすっかり暗くなっていたんでしょう。それに棺桶の底についていた小さい血の雫が分るなんて、あなたはまるで猫のような眼を持っていたのネ」
「棺桶の板は白い。血は黒い。だから見えたのに不思議はなかろう。――だが、もう頼むから、その話はよしておくれ。どうして君は今夜にかぎって、そう興奮するのだ」
ミチミはテーブルの上に肘をついて、その上に可愛い顎をチョンと載せた。
「あたし、なんだか今夜のうちに、思いきりお喋べりしておかないと、もうあんたとお話しができなくなるような気がしてならないのよ」
「そんな莫迦げたことがあってたまるものか。ねえ、君はすこし芯がつかれているのだよ」
「そうかもしれないわ。でもほんとに、今夜かぎりで、あんたと別れ別れになるような気がしてならないのよ。ああ、もっと云わせてもらいたいんだけれど――そこで先生が、棺桶のなかから、凝血を採集していって、それを顕微鏡の下で調べるところから、それは人血にまぎれもないことが分るとともに、その中からグリコーゲンを多分に含んだ表皮