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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页
前田はクルリとその友達の方に向き直ると、いたずら小僧のように片っ方の目をパチパチとした。それはすぐ杜の目にとまった。――彼は棺の上に急いで黒い布を掛けると一同の方に手をあげ、
「さあ、ほかの人はみな、議事堂の前に並んでみて下さい」
といって奥を指した。
女生徒たちは気味の悪い笑いをやめようともせず、杜先生のうしろから目白押しになって壇の方についていった。
杜先生は壇前に立ち、この劇においてローマ群衆はどういう仕草をしなければならぬかということにつき、いと熱心に説明をはじめた。それから練習が始まったが、女生徒たちは腕ののばし方や、顔のあげ方について、いくどもいくども直された。
七、八分も過ぎて、ローマの群衆はようやく及第した。ちょっとでも杜先生に褒められると、少女たちはキキと小動物のように悦ぶのであった。
「では、さっきのアントニオの演説のところを繰返してみましょう。――みなさん、用意はいいですか、前田マサ子さんは壇上に立って下さい。それから四人の部下は、シーザーの棺をこっちへ搬んでくる。――」
練習劇がいよいよ始まった。杜先生はたいへん厳粛な顔つきで、棺桶係の生徒たちの方に手をあげた。