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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

彼は、留守中なにごとかあったのだなと、すぐ悟った。

「いやに元気がないじゃないか。どうしたんだ」

と問えば、

「いえ、なんでもないの」

と、お千は蒼い顔を一層蒼くして、強くかぶりを振った。

「変だな。何かあるんだろう。云ってみたまえ」

彼女は、もう口を堅く閉じて首を左右に振った。

杜はどうしてお千に真実を云わせたものだろうかと、首をひねって考えていた。

「ごめんなさいまし。――」

そのとき門口に、男の声で、誰か訪う者があった。

「あッ、――」

とお千は、電気に懸ったように飛び上り、すぐさま門口に両手を拡げて立ちふさがった。

「あんたは出ちゃいけない。なんでもよいの。あたしが話をつけるから……」

そういっているとき、入口の幕をおし分けて、五十がらみの大きな男の顔がヌッと現われた。彼の顔は、渋柿のように真紅であった。

「いやあ、これはお安くないところをお邪魔仕りまして、なんとも相済みません、ねえ、こちらの御主人さんへ――」

五十男は、不貞不貞しい面つきで、ノッソリ中へ入ってきた。

「き、君は何者だ。ここは僕の住居だ。無断で入ってくるなんて、君は――」

「はッはッはッ、無断で無断でと仰有りますが、実はこのことについて貴公に伺いたいのだ」