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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

「たしか麹町の殿様半次とか云っていました」

「ええっ、殿様半次だと、――」

と警官連は半次の仕業と知ると、云いあわせたように仰天した。

「――つまりこの女の情夫である麹町の殿様半次が一番怪しいということになる。半次ならやりかねないだろう」

重大なるお尋ね者である半次は、天には勝てず、旧い友達のバラックに潜伏しているところを捕えられた。

それから取調べが始まった。

半次の前には、例の口付煙草入れと、土間から拾い上げた吸殻四個とが並べられた。

彼のアリバイは、彼の当初の声明を裏切って、遂に立証すべき何ものも見つからず、遂に彼は恐れ入ってしまった。

事件は次のように審理された。

すなわち半次は、当日お千をまた尋ねて、昔の如き情交を迫り、遂に目的を達したことは、お千の死体解剖によって明白である。

しかれどもお千は、今後の情交を拒絶し、もし強てそれを云うようであれば、半次の旧悪の数々とともに、彼の居所をその筋へ密告するからと脅迫したところから、半次は今はもうこれまでなりと思い、お千をくびり殺したものである――というのである。

これに反して、杜のアリバイは確実であった。