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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

君はまるで、夢の中で演説しているように見えるよ。長髪の青年氏と同棲していて、なんの純潔ぞやといいたくなる。もっとも僕は一向そんなことを非難しているわけではないがネ」

「まあ、そ、それは、いくら先生のお言葉でも、あんまりですわ、あんまりですわ。――」

ミチミは子供のように声をあげて、その場に泣き伏した。

杜は、曾て知っていたミチミとは別の成熟した若い女が、彼の前で白い頸を見せ、肩を慄わせて泣いているように思った。それはなんとはなく、彼の心に或る種の快感を与えるのであった。

ミチミは、泣き足りてか、やがて静かに身体を起した。両の袂を顔の前にあて、その上から腫れぼったい瞼を開くような開かないようにして、杜の方を見た。

「――覚えてらっしゃい」

ミチミは、たった一言云って、膝を立てて立ち上ろうとした。しかし彼女はヨロヨロとして畳の上に膝をついた。

「ウム、――」

そのとき杜は、不思議なものを見た。ミチミの白い脛の上から赤い糸のようなものがスーっと垂れ下ってきて、脛を伝わって、やがてスーっと踝のうしろに隠れてしまった。血、血だ!

見れば畳の上にも、ポツンと赤い血の滴りが滾れているではないか。