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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

「呀ッ、これは――」

と叫んだ。釦か鋲の頭かと思ったその小さな丸いものは、ヌルリと彼の指を濡らしたばかりだった。

彼はハッとして指頭を改めた。

「おお、血だ、――血が落ちている」

その瞬間、彼の全身は、強い電気にかかったように、ピリピリと慄えた。

2

「オイ房子」

「なによォー」

「どうだ、今夜は日比谷公園の新音楽堂とかいうところへいってみようか。軍楽隊の演奏があってたいへんいいということだぜ」

「そう。――じゃあたし、行ってみようかしら」

「うん、そうしろよ、これからすぐ出かけよう」

「アラ、ご飯どうするの」

「ご飯はいいよ。――今夜は一つ、豪遊しようじゃないか」

「まあ、あんた。――大丈夫なの」

「うん、それ位のことはどうにかなるさ。それに僕は会社で面白い洋食屋の話を聞いたんだ。今夜は一つ、そこへ行ってみよう。君はきっと愕くだろう」

「あたし、愕くのはいやあよ」

「いや、愕くというのは、たいへん悦ぶだろうということ、さあ早く仕度だ仕度だ、君の仕度ときたら、この頃は一時間もかかるからネ」

「あらァ、ひどいわ」といって房子は、間の襖をパチンとしめ、

「だってあんたと出かけるときは、メイキャップを変えなきゃならないんですもの。