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がっきのせいめい
楽器の生命
小川 未明
「随筆」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,679 字 · 8 页
「こんなに、魚が跳ねることは、めったにない。あのオルガンの音がするようになってからだ。」と、漁師で、いったものもありました。
お嬢さんは、病気ということを忘れて、夜もおそくまでオルガンを弾いていました。お父さんは、そのことを心配しました。そして、医者に、どうか注意してくれるようにと申されました。
医者は、たとえ、なんといっても、お嬢さんがいうことをきかないのを知っていましたから、当惑してしまいました。
「お嬢さん、夜、窓を開けて、そうして、いつまでも、オルガンをお鳴らしになるのは、いけません。」といいました。
「わたしは、あの波の音と、いま調子を合わせているのですよ。魚が、浮かれて跳ねると、浜の人たちはいっています。」と、お嬢さんは、怒りっぽい声で、音楽のほうに、気をとられていいました。
「いえ、お嬢さん、海の方から吹いてくる潮風で、オルガンがいたむからいったのです。」と、医者は、答えました。
彼女は、オルガンがいたむときいて、はじめてびっくりしました。
お嬢さんは、病気がよくならないで、とうとう死んでしまいました。そして、このオルガンは、この村の小学校へ寄付することになりました。