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じゅいんざっき
樹蔭雑記
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,566 字 · 10 页
を、否定し尽す人はないだろう。
下らない賞讚にあって、少し頭に血が上ったのを知ると情けない。
小さい誹謗に、口元を引締めるのを知ると寂しい。
あらゆるそういう動機によって、創作のモーティブが不純になる事を畏れて、戯作三昧の主人公のように、成べく、其を耳にしないようにするべきだろうか。又如何に其等が群をなして飛んで来ようと、端然と己を持して居られる丈の自らの力の成育を希うべきであろうか。
自分は後者であり度く思う。ありたく思うのみならず、そう努力して行こうと心に思い定めて居る。
総ての事物に、合一される事が無くなり度い。
同じ日
今日は偉く暑い日である。
紐育などはどんなだろうと思い遣った丈で汗が滲み出る。
息もつまりそうにうっそうと茂ったエルムの梢を、そよりとも動かす微風もなくて、静かに横わった湖水から、彼岸の山にかけて、むっとした息のような霞が掛って居る。何時とはなく肌がしめるような部屋で机に倚りながら、東京ももうさぞ暑い事だろうなと思う。
父上の白い洋服がやたら心に浮ぶ。暑いと云えば、毎年暑中たまらない思いをして来た須田町の午後の日ざかりを思い出す。