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きかい

機械

横光 利一

「改造 第十二卷第九號」1930(昭和5)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,553 字 · 41 页

青空文庫

私はいかに主人がお人好しだからといってそんな重大なことを他人に洩して良いものであろうかどうかと思いながらも、全く私が根から信用されたこのことに対しては感謝をせずにはおれないのだ。いったい人というものは信用されてしまったらもうこちらの負けで、だから主人はいつでも周囲の者に勝ち続けているのであろうと一度は思ってみても、そう主人のように底抜けな馬鹿さにはなかなかなれるものではなく、そこがつまりは主人の豪いという理由になるのであろうと思って私も主人の研究の手助けなら出来るだけのことはさせて貰いたいと心底から礼を述べたのだが、人に心底から礼を述べさせるということを一度でもしてみたいと思うようになったのもそのときからだ。だが、私の主人は他人にどうこうされようなどとそんなけちな考えなどはないのだからまた一層私の頭を下げさせるのだ。つまり私は暗示にかかった信徒みたいに主人の肉体から出て来る光りに射抜かれてしまったわけだ。奇蹟などというものは向うが奇蹟を行うのではなく自身の醜さが奇蹟を行うのにちがいない。それからというものは全く私も軽部のように何より主人が第一になり始め、主人を左右している細君の何に彼に反感をさえ感じて来て、どうしてこういう婦人がこの立派な主人を独専して良いものか疑わしくなったばかりではなく出来ることなら