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とちのはな

橡の花

梶井 基次郎

「青空」1925(大正14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,685 字 · 22 页

青空文庫

必要に迫られてのことだったら好意すら持てます。然しそうだとは決して思えないのです。浅はかな気がします。

女の髪も段々堪らないのが多くなりました。――あなたにお貸しした化物の本のなかに、こんな絵があったのを御存じですか。それは女のお化けです。顔はあたり前ですが、後頭部に――その部分がお化けなのです。貪婪な口を持っています。そして解した髪の毛の先が触手の恰好に化けて、置いてある鉢から菓子をつかみ、その口へ持ってゆこうとしているのです。が、女はそれを知っているのか知らないのか、あたりまえの顔で前を向いています。――私はそれを見たときいやな気がしました。ところがこの頃の髪にはそれを思い出させるのがあります。わげがその口の形をしているのです。その絵に対する私の嫌悪はこのわげを見てから急に強くなりました。

こんなことを一々気にしていては窮屈で仕方がありません。然しそう思ってみても逃げられないことがあります。それは不快の一つの「型」です。反省が入れば入る程尚更その窮屈がオークワードになります。ある日こんなことがありました。やはり私の前に坐っていた婦人の服装が、私の嫌悪を誘い出しました。