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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

梶井基次郎『檸檬・ある心の風景 他二十編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:檸檬、ある心の風景、愛撫、ある崖上の感情、泥濘、闇の絵巻、冬の蠅、冬の日、闇の書、Kの昇天、筧の話、過古、器楽的幻覚、のんきな患者、路上、桜の樹の下には、雪後、城のある町にて、蒼穹、海、温泉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 127,934 字 · 263 页

青空文庫

寝るには余り暗い考えが彼を苦しめるからでもあった。彼は悪い病気を女から得て来ていた。

ずっと以前彼はこんな夢を見たことがあった。

――足が地脹れをしている。その上に、噛んだ歯がたのようなものが二列びついている。脹れはだんだんひどくなって行った。それにつれてその痕はだんだん深く、まわりが大きくなって来た。

あるものはネエヴルの尻のようである。盛りあがった気味悪い肉が内部から覗いていた。またある痕は、細長く深く切れ込み、古い本が紙魚に食い貫かれたあとのようになっている。

変な感じで、足を見ているうちにも青く脹れてゆく。痛くもなんともなかった。腫物は紅い、サボテンの花のようである。

母がいる。

「あああ。こんなになった」

彼は母に当てつけの口調だった。

「知らないじゃないか」

「だって、あなたが爪でかたをつけたのじゃありませんか」

母が爪で圧したのだ、と彼は信じている。しかしそう言ったとき喬に、ひょっとしてあれじゃないだろうか、という考えが閃いた。

でも真逆、母は知ってはいないだろう、と気強く思い返して、夢のなかの喬は

「ね! お母さん!」と母を責めた。

母は弱らされていた。