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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
梶井基次郎『檸檬・ある心の風景 他二十編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:檸檬、ある心の風景、愛撫、ある崖上の感情、泥濘、闇の絵巻、冬の蠅、冬の日、闇の書、Kの昇天、筧の話、過古、器楽的幻覚、のんきな患者、路上、桜の樹の下には、雪後、城のある町にて、蒼穹、海、温泉。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 127,934 字 · 263 页
と最後の決心をするようになるのだが、そのときはもう何故か手も足も出なくなったような感じで、その傍に坐っている自分の母親がいかにも歯痒いのんきな存在に見え、「こことそこだのに何故これを相手にわからすことができないのだろう」と胸のなかの苦痛をそのまま掴み出して相手に叩きつけたいような癇癪が吉田には起こって来るのだった。
しかし結局はそれも「不安や」「不安や」という弱々しい未練いっぱいの訴えとなって終わってしまうほかないので、それも考えてみれば未練とは言ってもやはり夜中なにか起こったときには相手をはっと気づかせることの役には立つという切羽つまった下心もは入っているにはちがいなく、そうすることによってやっと自分一人が寝られないで取り残される夜の退引きならない辛抱をすることになるのだった。
吉田は何度「己が気持よく寝られさえすれば」と思ったことかしれなかった。こんな不安も吉田がその夜を睡むる当てさえあればなんの苦痛でもないので、苦しいのはただ自分が昼にも夜にも睡眠ということを勘定に入れることができないということだった。吉田は胸のなかがどうにかして和らんで来るまでは否でも応でもいつも身体を鯱硬張らして夜昼を押し通していなければならなかった。