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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
梶井基次郎『檸檬・ある心の風景 他二十編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:檸檬、ある心の風景、愛撫、ある崖上の感情、泥濘、闇の絵巻、冬の蠅、冬の日、闇の書、Kの昇天、筧の話、過古、器楽的幻覚、のんきな患者、路上、桜の樹の下には、雪後、城のある町にて、蒼穹、海、温泉。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 127,934 字 · 263 页
すると印度人は自分の手を引き込めて、観客の方を向き、その男の手振を醜く真似て見せ、首根っ子を縮めて、嘲笑って見せた。毒々しいものだった。男は印度人の方を見、自分の元いた席の方を見て、危な気に笑っている。なにかわけのありそうな笑い方だった。子供か女房かがいるのじゃないか。堪らない。と峻は思った。
握手が失敬になり、印度人の悪ふざけはますます性がわるくなった。見物はそのたびに笑った。そして手品がはじまった。
紐があったのは、切ってもつながっているという手品。金属の瓶があったのは、いくらでも水が出るという手品。――ごく詰まらない手品で、硝子の卓子の上のものは減っていった。まだ林檎が残っていた。これは林檎を食って、食った林檎の切が今度は火を吹いて口から出て来るというので、試しに例の男が食わされた。皮ごと食ったというので、これも笑われた。
峻はその箸にも棒にもかからないような笑い方を印度人がするたびに、何故あの男はなんとかしないのだろうと思っていた。そして彼自身かなり不愉快になっていた。
そのうちにふと、先ほどの花火が思い出されて来た。
「先ほどの花火はまだあがっているだろうか」