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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

」

「論旨さ、むろん。」

「論旨って何だい。」

「論旨退学の論旨だよ。」

「先生にもそんなことがあるんだね。」

「あるとも、それがなくって自分からやめる先生なんて、ありゃせんよ。」

「しかし、ホウキョウ・ホウシュン、かわいそうだな。はやく転任でもすりゃいいのに。」

「転任したって、またすぐ駄目になるさ。」

「どうせ引きうける学校もないだろう。」

「やっぱり山伏をやる方が似合っているよ。」

生徒たちは、そんなことを言っては、笑ったり手をたたいたりした。次郎は、聞いているのがつらくなり、急いでその場をはずした。

教室に入ってみると、もうそこでも、宝鏡先生のことでみんながわいわいさわいでいた。そして、次郎の顔を見ると、

「やあ、本田が来た、来た。」

「掲示を見たか。」

「どうだ、痛快だろう。」

などと、くちぐちに次郎に祝意を表するようなことを言うのだった。

次郎は、しかし、にこりともしないで自分の席に腰をおろした。そして、雑嚢を机の上に置くと、そのまま頬杖をついて、眼を黒板の方に注いだ。

「どうしたい、本田。」

と、二三人が彼の方によって来た。それでも彼は返事をしない。みんなの視線は、自然と彼の方に集まった。