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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

二人は門口を出ると、むせるように蚊やりの煙の流れている町を、沈默がちに歩いた。

*

さて翌々日の夕方、二人はもう一度宝鏡先生を訪ねて行ったが、驚いたことには、家はもう空家になっており、閉された戸に一枚の半紙が貼りつけてあって、それには郵便物の転送先の学校名が記されていたのだった。

「どうしたんだろう。」

二人は、その半紙を見つめて、しばらく立ちすくんだあと、すぐその足で朝倉先生をたずね、事情をきいてみた。しかし、朝倉先生も何も知らなかったらしく、二人の話で、しきりに首をかしげていたが、

「じゃあ、もう多分たたれたんだろう。学校の方には私から知らしておく。しかし、あさっては、君ら二人だけでもいいから、念のため示された時刻に駅に出てみるがいいね。」

翌々日、二人は、言われたとおり駅に出てみた。駅には先生も生徒もまだ一人も見えていなかった。少しおくれて体操の先生があたふたとやって来たが、二人を見ると、

「宝鏡先生の見送りなら、もう帰ってもいい。一昨日たたれたそうだから、途中でほかの生徒にあったら、そうつたえてくれ。」

二人は、それでも、発車時刻になるまで駅の前あたりをぶらぶらしていた。