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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

そして、

「じゃあ、これは宿題だ。君自身の問題と結びつけて、よく考えてみることだね。」

次郎は、しかし、そう言われると、何もかも一ぺんにわかったような気がした。彼はやにわに立ち上って、先生のまえに立ちふさがるようにしながら、

「先生、わかりました。」

「どうわかったんだ。」

「人間の世の中は、草っ原にころがっている大理石のようなものです。」

「うむ。」

「その中には、女神のような美しいものが、ちゃんと具わっているんです。」

「うむ、それで?」

「僕たちがそれを刻み出すんです。」

「君が春月亭に行ったのもそのためだったんだね。」

「そうです。」

「しかし、君の鑿はすぐつぶれてしまったんじゃないか。」

「僕、もう一度研ぎます。」

「研いでもまたつぶれるよ。」

「つぶれたら、また研ぎます。」

次郎は意気込んでそう答えた。

「そうか。しかし、そう何度もつぶしては研ぎ、つぶしては研ぎしていたんでは、かんじんの鑿がすりきれてしまいはせんかね。」

朝倉先生は、そう言いながら、笑っていた。次郎はちょっとまごついたふうだったが、すぐ、決然となって、

「僕、間違っていました。僕は決してつぶれない鑿になるんです。