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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

畦道を一列になって歩いたが、かなり長い列だった。提灯が先頭と後尾にゆらゆらとゆれた。次郎は三人のうちでは先頭だったが、自分のすぐ前に、大きな男が棒をどしんどしんとわざとらしくついて行くのを、皮肉な気持で仰いだ。そして歩いて行くうちに、しだいに寒さが身にしみ、踵のあかぎれがつきあげるように痛み出すと、もう「人を愛する」といったような気持とは、まるでべつな気持になっていた。

つれて行かれたのは、この辺の山村にしては不似合なほど大きな門のある家で、玄関には一畳ほどの古風な式台さえついていた。

次郎たちを玄関の近くに待たして、二三人の青年が勝手の方にまわった。しばらくすると、

「ほう、三人、……そうか、そうか。」

と、奥の方からさびた男の声がして、やがて玄関の板戸ががらりと開いた。

「さあ、お上り。」

そう言ったのは、もう八十にも近いかと思われる、髪の真白な、面長の老人だった。

次郎は、山奥に隠栖している剣道の達人をでも見るような気がした。彼は、何かの本で、宮本武蔵が敦賀の山中に伊藤一刀斉を訪ねて行った時のことを読んだことがあったが、それを思い出しながら、おずおず大沢と恭一のあとについて玄関をあがった。