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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

さすが次郎君だ。かかえ出されても、勝負にはたしかに勝っているね。」

と、わざとおだてるようなことを言ったりした。そして、次郎が最後に、

「僕、どうしたらいいかわからないので、新賀君の考えをきいてたところです。」

といくらかきまり悪そうに首をたれると、大沢は、

「ふうむ、なるほど。仁に当っては師に譲らずか。朝倉先生そんなことを言ったんかな。ふうむ。――」

と、何度も首をふり、それから、恭一に向かって、

「どうだい、本田、君、兄さんとして次郎君に何とか言ってやれよ。」

恭一は、しかし、次郎の顔を見つめているだけだった。すると、新賀が横から、突っかかるように言った。

「大沢さんは、朝倉先生の言ったこと、いいと思うんですか。」

大沢は微笑した。そして、ちょっと考えていたが、すぐあべこべに問いかえした。

「君は、いけないと思うかい。」

「いけないと思うんです。」

「どうして?」

「悪くない者にあやまれなんて、そんなこと無茶です。」

「しかし、是非あやまれとは言わなかったんだろう。ねえ、次郎君。」

「ええ。考えろって言われたんです。」

「じゃあ、あやまらなくてもいいんですね。」

と、新賀の調子は、少し皮肉だった。