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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

それが果して君に出来るんかい。」

次郎にはさすがに返事が出来なかった。恭一は不安な顔をして、

「しかし、次郎が自分であやまるつもりなら、あやまらしてもいいんじゃないかね。」

「むろん、僕はそれをとめはせん。次郎君に自信があれば、やるがいいさ。やった結果がどうなるか、それを見るのも面白いかも知れんね。」

次郎は追いつめられるような気がして、すっかり落ちつきを失った。恭一も、そう言われると、べつの意味で不安を感じ出した。新賀はそれまで默りこんで仏頂づらをしていたが、急に、

「僕、もう失敬します。」

と立ち上りかけた。

「まてよ。どうも君は気が短かくていかん。」

と、大沢は彼を手で制して、

「どうだい、今夜は、僕、朝倉先生を訪ねてみたいと思うが、君らもよかったらいっしょに行かないか。」

大沢のこのだしぬけな提議は、三人にとって、全く意想外だった。同時に、それは、今までの部屋の空気をいっぺんに明るくした。

「うむ、それはいい。そうすれば安心だ。次郎、行ってみようや。……新賀君もどうだい。」

と、恭一が、いつもにない、はしゃいだ声で言った。

新賀は、朝倉先生にはまだ近づきがなかったせいか、ちょっと躊躇するふうだったが、好奇心とも、まじめな期待ともつかぬ、一種の興味に刺戟されて、すぐ賛成した。