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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

集まりには、いつも先生の書斎兼座敷と、その次の間とが使われたが、そのほかに、二階の八畳が、会員の図書室として年中開放されていた。玄関のつきあたりの階段をのぼったところがその部屋で、そこには、一間ものの本箱が一つと、うるしのはげた大きな卓が一脚すえてあった。本箱には、先生の読みふるしの本がいっぱいつまっており、たいていは、歴史や、伝記や、古典の評釈や、定評のある文芸物などで、新しい作家のものはほとんど見当らなかった。なお、会員が持ちよったらしい青少年向のいろんな読物が、一番下の段に三十冊あまりならんでいたが、それらは、先生の読みふるしの本とちがって、かなり装幀がくずれており、どの頁にも色鉛筆で、線や圏点が入れてあった。――集会の折の話題の半分以上は、この部屋での読書から生れるらしかった。

次郎は、会員になってから、ほとんど一日おきぐらいには、学校の帰りにこの部屋に立ち寄った。すると、たいてい誰かが来合わせていた。たまには五六人もいっしょになることがあった。誰もがそれぞれ特色を持ちながら、どこかに何か共通な気持が流れているのが、次郎にもよく感じられた。