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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
横光利一『欧洲紀行』。同一底本的分册已合并为一书。收入:欧洲紀行、静安寺の碑文、北京と巴里(覚書)、我等と日本、スフィンクス(覚書)。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,107 字 · 241 页
われわれの頭の中はたしかに二十世紀である。そして、混乱と言われるごとき混乱の状態もたしかにある。しかし、物を混乱と見るためにはどこかにそのように見た原点がなければならぬ。ところで、われわれ東洋人の心の原点となって来たものは、西洋の原点とも言うべき、「われ想う故にわれ在る」心のような批評的な図式があったのだろうか。これの善悪はともかくとして、文学の問題として見れば、道元の「鳥飛んで鳥に似たり。」というがごとき、また馬祖の、「われ在るにあらざれど、この痛みいずこより来る。」というがごときは、電流のように時間の単位ともいうべき時空一如の流れる零点の上に、すべて在る物をあらしめようとした自由奔放な原点として、東洋人はすでにこれを設定していたように見える。東亜の共同の論理というのも、この自由さの上に置かれてこそ、西洋の原点をさえ生かし得られ、それぞれの独自性をも保たしめつつ、生活の設計を可能にせられるような気もふと感じる。私は電気学については知らないが、人間が触りもせずして意志の通じる眼の光りに、文学の根拠を置いて来た東洋人の心理を想像すると、初めから東洋の天才は、この電気の電磁核と同様なものを感覚していた人物のごとくに思われてならぬ。