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うたまろざんげ
歌麿懺悔
邦枝 完二
江戸名人伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,396 字 · 23 页
「そう驚くにゃ当るまい。おいらを、お前さんの買った陰女に会わせてくれというだけの話じゃねえか」
「冗談いっちゃいけません。いくら何んだって師匠が陰女なんぞと。……」
「あッはッは。つまらねえ遠慮はいらねえよ。こっちが何様じゃあるめえし、陰女に会おうがどぶ女郎に会おうが、ちっとだって、驚くこたアありゃしねえ」
「それアそういやそんなもんだが、あんな女と会いなすったところで、何ひとつ、足しになりゃアしやせんぜ」
「足しになろうがなるめえがいいやな。おいらはただ、お前の敵を討ってやりさえすりゃ、それだけで本望なんだ」
「あっしの敵を討ちなさる。――冗、冗談いっちゃいけません。昔の師匠ならいざ知らず、いくら達者でも、いまどきあの女を、師匠がこなすなんてことが。――」
「勝負にゃならねえというんだの」
「お気の毒だが、まずなりやすまい」
「亀さん」
歌麿は昂然として居ずまいを正した。
「へえ」
「何んでもいいから石町の六つを聞いたら、もう一度ここへ来てくんねえ。勝負にならねえといわれたんじゃ歌麿の名折だ。飽くまでその陰女に会って、お前の敵を討たにゃならねえ」
おめえの敵と、口ではいっているものの、歌麿の脳裡からは、亀吉の影は疾うに消し飛んで、十年前に、ふとしたことから馴染になったのを縁に、錦絵にまで描いて売り出した、どぶ裏の局女郎茗荷