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せいぎ
正義
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 页
そう確信するのだ。ねえ、清川、君は如何考えるね」
夢中になって室中を歩きまわりながら喋舌り立てて居た衣川は、一気にこう云い終ると、今度はこっちから食ってかかるように、清川の顔を見ながら、冷え切った紅茶をぐっと呑み込んだ。
「だから、僕はさっき云った通り、森木がやったんじゃない、という気がするのです」
今度は清川の方が稍たじろぎながら、力のない声で返事をした。そうして、何となく手もち無沙汰そうに、思い出したように、紅茶の茶碗を手に取り上げた。
又しても沈黙がつづいた。
風はまだやまない。窓ガラスは時々音をたてて雪の烈しいのをしらせて居る。
衣川柳太郎は清川に対して、否万人に対して、今や法律家以外の何ものでもない。
彼は自己に反撃する何者をも敵として、食いつこうとして居る。彼はもはや昔の友情などを思い出しては居ない。彼は何故、清川が雪の夜彼を訪ねて来たか、そんな事をもはや問題にしては居ないのだ。
然し沈黙は清川によってまず破られた。
急に、深刻な顔貌になりながら、清川が云った。
「衣川さん、あなたは森木の無罪を立証する必要はない、と云われた。けれどもその立証が出来ればなおいいのでしょう。