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しょうせつのかきおき

正雪の遺書

国枝 史郎

「サンデー毎日」1924(大正13)年4月1日春季特別号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,367 字 · 15 页

青空文庫

また甲斐国甲府の城は要害堅固にして征むるに難い。しかし某の兵法をもってすれば陥落れることも容易である。一手は下野日光山に立籠もることも肝要でござろう。華麗を極めた東照宮を焼き立てるのも一興じゃ」

それから私はなお細々と、策戦について語りました。

「江戸は本丸西丸の、両丸に兵燹を掛けねばならぬ。機を見て城中へ兵を進め新将軍を奪取する。又京都は二条の城及び内裏へも火を放ち、勿体至極もないことながら、帝の遷幸を乞い奉れば公卿百官は草の如くに必ず伏し靡くに相違ござらぬ……」

こう云って説いて行く中に私はふっとこんな事を心の隅で思いました。

「この従順な勇士達を、手足のように使い砕し、ほんとに自分が徳川家に対して、不軌を計ったとしたならばどういう結果になるであろう? 三月、いやいや二月でもよい、二月の間幕府の軍を、支えることは出来ないであろうか? 二月幕兵を防ぎ得たとしたら、四国九州に残っている、豊臣恩顧の大名達が、旗を動かさないものでもない。それらの大名と呼応したならば面白い賭博が打てるかもしれない」

私は一種の武者振いを禁ずることが出来ませんでした。

「しかし」