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たけだりんたろうついとう

武田麟太郎追悼

織田 作之助

「文芸新風」1946(昭和21)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,277 字 · 7 页

青空文庫

だからこんどの急死も武田さんが飛ばしたデマじゃないかと、ふと思ってみたりする。

死因は黄疸だったときく。黄疸は戦争病の一つだということだ。新大阪新聞に連載されていた「ひとで」は武田さんの絶筆になってしまったが、この小説をよむと、麹町の家を焼いてからの武田さんの苦労が痛々しく判るのだ。不逞不逞しいが、泣き味噌の武田さんのすすり泣きがどこかに聴えるような小説であった。「田舎者東京を歩く」というような文章を書いていた。芯からの都会人であった武田さんが、自分で田舎者と言わねばならぬような一年の生活が、武田さんを殺してしまったのだ。戦争が武田さんを殺したのだ。

絶筆の「ひとで」を私はその新聞の文化欄でほめて置いた。武田さんでなければ書けない新聞小説だと思ったのだ。新聞小説としては面白い作品とは言えなかったであろう。しかし、激しい世相の中に身を置いた武田さんの正直さがそのままにじみ出ているような作品であった。その正直さはふと律儀めいていた。一見武田さんに似合わぬ律儀さであった。が、これが今日の武田さんの姿としてそのまま受け取って、何の不思議もないと私は見ていた。