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むさしの

武蔵野

山田 美妙

「読売新聞」1887(明治20)年11~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,798 字 · 26 页

青空文庫

ところへ大層急ぎ足で西の方から歩行て来るのはわずか二人の武者で、いずれも旅行の体だ。

一人は五十前後だろう、鬼髯が徒党を組んで左右へ立ち別かれ、眼の玉が金壺の内ぐるわに楯籠り、眉が八文字に陣を取り、唇が大土堤を厚く築いた体、それに身長が櫓の真似して、筋骨が暴馬から利足を取ッているあんばい、どうしても時世に恰好の人物、自然淘汰の網の目をば第一に脱けて生き残る逸物と見えた。その打扮はどんなだか。身に着いたのは浅紺に濃茶の入ッた具足で威もよほど古びて見えるが、ところどころに残ッている血の痕が持主の軍馴れたのを証拠立てている。兜はなくて乱髪が藁で括られ、大刀疵がいくらもある臘色の業物が腰へ反り返ッている。手甲は見馴れぬ手甲だが、実は濃菊が剥がれているのだ。この体で考えればどうしてもこの男は軍事に馴れた人に違いない。

今一人は十八九の若武者と見えたけれど、鋼鉄の厚兜が大概顔を匿しているので十分にはわからない。しかし色の浅黒いのと口に力身のあるところでざッと推して見ればこれもきッとした面体の者と思われる。身長はひどく大きくもないのに、具足が非常な太胴ゆえ、何となく身の横幅が釣合いわるく太く見える。