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しね!
死ね!
豊島 与志雄
「文芸」1934(昭和9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,979 字 · 18 页
危い、と私は思った。然し彼のような男が自殺する……。この考えは私には、何だか滑稽にさえ思われた。いつ死んでもいいということは、いつまで生きていてもいいということに外ならない。それは自然に任せるということだ。自然に任せるということは、意志的な自殺などとは凡そ対照的だ。
忘れよう。私は忙しかった。
然しともすると、彼の姿が頭に浮んでくるのだった。それが仕事の邪魔となった。私は眉をしかめて、彼に詰問した。
――お前は、あんな女のどこがいいんだ。単純な無智なああいう種類の女は、生に対して盲目であると共に、死に対しても盲目だ。流れにのった浮草だ。その浮草にすがって一緒に押し流されることについて、お前は一体何を発見したのだ。つまらない感傷を捨てろ。
――君が説いているのはすべて理屈だ。僕はただ事実だけを知っている。僕と彼女とは愛し合っているのだ。愛は理知的なものではなく、肉体的な秘密だ。例えば、抱き合って唇を合わして見給え。そのままで三十分も一時間も、じっともちこたえられて、なお名残りが惜しまれたら、本当にお互が愛し合える。嫌気がさすようだったら、愛し合えない証拠だ。