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しのよこく

死の予告

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页

青空文庫

「お前は何んだ、お前は?」

驚きと怖れと、激しい憤怒におののく女の眼の前へ、

「わからないか。俺は警視庁の花房一郎だよ」

「アッ」

驚いたのは照子ばかりではありません、思いもよらぬ名探偵の出現に、一座は開いた口も塞がりません。

「エッ口惜しい、斯うなればお前の世話になるものか」

花房一郎の方の「足の勇」が飛び付く暇もなく、女の手は素早く口へ、四辺はプンと杏仁の香がします。

「アッ、まだ青酸加里を持って居たのか」

言いも終らぬに、殺人鬼鏡照子の身体は朽木のように床の上に倒れてしまいました。

最初伯爵の話を聞いた時、私――千種十次郎――は、この事件の容易でないことを知りましたが、伯爵はどうしても警察の手に委ねる事を拒んだので、懇意な名探偵花房一郎の隠れ家に手紙をやって、「足の勇」に化けて海原伯爵邸へ入り込ましたのです。

この私の勝手な処置については、くれぐれも伯爵に詫びましたが、これ程の重大事件と解って見れば、私のやった事に対して、却って伯爵は感謝するばかりでした。

後で、どうして殺人鬼の正体を突きとめたかと花房探偵に聞くと、

「何んでも無いよ。犯人は家の中に居ることは確かだから、一番身許の不明なあの女を調べたんだ。