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しのよこく
死の予告
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页
もう二十歳位でしょうが、美しい上、陽気で明けっ放しで、実に鮮かなお転婆振りを発揮します。
「何? 私?」
伯父伯爵が麾くと、美しいローンを、小兎のように飛んで来て、二人の前へ立ち止ります。
「あら、千種さん、何時の間に入らしったの? 今日は何んな事があったって帰しやしませんよ、此間の敵を討ってキュウキュウ言わして上げるから」
美しい素顔を上気させて、ハアハア息をはずませ乍ら物を言う様子は、眼の前へパッと咲いた桜のような感じのする娘です。
「何んという行儀だ。第一に挨拶をしないか、いきなり敵を討つなんて、いやな言葉じゃないか」
伯爵は妙なところへ神経を尖らせます。
「テニスの事よ」
「何んだつまらない」
「伯父様、どんな御用?」
可愛らしく首をかしげて、ラケットに頬ずりしそうなポーズになります。空色の薄いセーターに、運動靴、短かく刈り込んだ柔かい毛が春の光を天鵞絨のように吸い込んで居るのも美しい限りです。
「瑛子さんは、死んだ大川が手に持って居た手紙の事を詳しく知って居たようだネ」
「まア、そんな話をして入らっしゃるの。千種さんは此家へ入らっしゃると、新聞気を出さないお約束になって在らっしゃるのよ」