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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

湯葉も、薄い普通のではない。湯葉を竹にかける時、竹につく滓の厚く、固くなって、竹のかたのついた奴である。私が、骨屋町へ無くなると買いに行った。

「又、湯葉か」

と、隣りの友人が、箸でつついたので、そいつの弁当を叩き落とした事があった。中学五年間、この油揚げと、湯葉で一貫した。

十四番が最高で、成績はよくなかったが、その代りに、初めて出来た中之島の、大阪市立図書館へ

「図書館へ行かんとあかん」

の、私の一言で「真平御免」の父は

「そうか」

と、許してくれた。二銭で、一時に、三冊貸してくれる。学校から戻ると、中之島まで――これが又、相当の道のりで、恐らく、今の、バス、電車を利用する学生にはわかるまいが、雨が降り出したり、つい遅くなって、夜に入ったりしては、相当つらいものであった。

今でも、司書をしておられるか――名を忘れたが、細面の、病弱らしい、出し入れのかかりの人が、三年余り前、大阪へ行った時、一寸行ってみたら、未だ在勤で、挨拶をされてなつかしかった。

ある一つのカードの函などは、ことごとく読んでしまった。歴史、数学、文学に亙って、読んだの、読まぬの、貸本屋以来の渇望で、めちゃめちゃに読んだ。