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しまでをかたる
死までを語る
直木 三十五
「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页
(おれは、恩給取りにはなれん。不孝者だが仕方がない)
と思って、知らん顔をして帰ってきた。
「何うやった」
「駄目だろう」
「ふむ――何が悪い」
「高等学校は、中々一ぺんで入られへん。それより私立へ行った方がいい。勉強さえしたら、私立でも、官立でも一緒や」
「私立はあかん、岡山が、いかなんだら、来年もう一遍受けてみ」
薄病院の院長は
「植村、速記者になれ」
と、云ってくれた。院長を、崇拝している父は、いろいろの所で、速記者というものを聞いてきて
「あら金が儲かる。衆議院で演説するやろがな。それをあとから一寸取消してくれ、と云いに行く時、金を包んでくるのやが、これが大きい。ええ商売や、人の気のつかん商売や」
恩給が、忽ち、速記者になったが、私は対手にしなかった。
十九
当時、末吉橋東詰松屋町に、豊竹呂昇の持小屋「松の亭」というのがあった。ここに落語がかかっていた。友人に連れられて、一夕赴いたが、女剣舞師に花房百合子というのがあって、剣舞一つ、踊一つ、居合抜き、軍歌と、これだけやるが、この女に惚れた。これが、私の初恋である。
雪はちらちら降るその中を
熊本連隊十三隊