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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

「置いてもろていい?」

と、いうより外に、家出娘の生活法はない訳である。

「ええ、よろしい」

とにかく、対手は、六つ齢上の二十七歳、こちらは、童貞の二十一歳であるから、礼を正しく、言葉を丁寧に

「しかし、寝るところが、ここよりほかに、ありませんから」

「そりゃええわ、一緒に寝るわ。藤堂さんと三人でしょう」

「はい」

皆、中学同期の出身であるから、仲がよかった。私は身体が、ふわふわとなったように感じたが、それは、こんな美しい人が、自分のような者を手頼って来てくれた、という事に対しての感謝で、劣情などの如きは神様に食わしてしまえと

「布団を、じゃ、借りてきて」

「ええ」

素直に答えたが、この女は私を獲ようとして、大阪から出てきたのである。しかし、何事もなかった。翌日

「市ちゃんとこへ行きましょうか」

「うむ」

そして、二人は、植木屋の離れで、市ちゃんと三人で寝た。

その暁、私は、無残にも、取り返しのつかぬ事を、されてしまったのである。

二十四

「荷物をもってくるから」

と、云って、須磨子は、大阪へ帰ってしまった。私は汚された身を、袴でつつんで、おもしろくない講義を聞きに行っていたが、その内