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しいんのぎもん
死因の疑問
豊島 与志雄
「小説公園」1951(昭和26)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,260 字 · 27 页
それかといって、自殺の覚悟だったとも、信じられません。清さんは吹雪の夜、ちょっとした用で外に出かけ、途中で何かの幻想に溺れて、ふらふらと雪の吹き溜りの方へ踏み込んでゆき、不用心のあまり凍死するようなことになった、そのように想像しますのは、年甲斐もなく甘いロマンチックな気持ちでしょうか。凍死というものは、或る一点をすぎると、うっとりとした快いものだそうではございませんか。
わたくしどもにも罪があるような気が致します。それはそれとしまして、清さんも変ったひとでした。物事をはきはき言う代りに、中心の肝要なことはすべてぼかしてしまったのですもの。肝要なこととそうでないこととの、区別がつかなかったかとさえ思われます。それからまた、嘗て恋人がほんとにあったとしますれば、その恋人への思慕、雪中登山の書物、それとはまた別種の、仏教の雰囲気、旦那さまという古めかしい観念、また別に、穢れを知らぬ素直な気質、孤独への趣味、数え立てればいくらもありますが、それらのものが、一つの精神の中にどうして同居することが出来たのでしょうか。頭のよい子だったと申しましたが、考えてみれば、全体の統一はなかったようです。