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ころされたてんいちぼう
殺された天一坊
浜尾 四郎
「改造」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,716 字 · 27 页
「自分のする事は間違いはないのだ。自分のする事は凡て正しいのだ」
斯ういう心持が常に働いて居たためああした華やかしい御裁きがお出来になったのだと存じます。
貴方様方も御承知の事でございましょうが、一人の子供を二人の母親が争いました時に御奉行様が御執りになった御裁きなどは誰もが皆感心したものでございました。
「真実の母親なればこそ、子供が泣いた時に手を放したのだ。それにもかまわず引きずるのは真の母親ではない。偽者めが」
斯う仰言って、さっと御座をお立ち遊ばした時のあの御姿の神々しさ、私などはほんとうに有難涙にくれたものでございました。多くの方々もあっと云って感服致したものでございます。だが、私はあの時、敗けて偽者めと仰言られた女が、大勢の人々に罵られながら立って行く有様を見て何となく気の毒に思った事でございます。
御承知でもございましょうが、日本橋辺の或る大きな質屋が、自分の地内に大きな蔵を建てまして隣家の小さな家に全く日の当らないように致しました時、隣家から訴え出ました際のあの名高い御立派な御裁き振もやはりあの頃の事でございました。
神田お玉が池の古金買八郎兵衛の家の糠味噌桶の中から、五十両の金子を盗み出しました男をその振舞から即座に御見出しになりました時などは、ほんとうに江戸中の大評判となりましたもので