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さつじんめいろ

殺人迷路

夢野 久作

07 (連作探偵小説第七回)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,931 字 · 12 页

青空文庫

帽子を冠り直した。タッタ今出て来た新聞社の玄関から、受付の女に咎められるのも構わずに、一気に階上へ駈け上ると、何度も来たことのある調査部の扉をたたいて中に這入った。顔なじみの部員に古い○○館出版の西鶴全集の下巻を出して貰って。それでも帽子を脱いで横に置きながら第六十九頁を開いた。サイカク……六九……サイカク、六九と口の中でくり返しながら……。

――本朝桜蔭比事。巻の四。第七章――「仕掛物は水になす桂川」

昔、京都の町が静かで、人々が珍らしい話を聞き度がっている折柄であった。五月雨の濁水滔々たる桂川の上流から、新しい長持に錠を卸して、上に白い御幣を置いたものが流れて来た。そこで拾った人間が、御前へ差出して処分方を伺い上げたものであったが、開かせて御覧になると、中には古こけた髑髏が五個と、女の髪毛が散らばっていたので、皆、肝を消して震え上った。然るに、お上では格別に驚かれた様子も無いばかりか、あべこべに拾った人間をお叱りになって、「おのれ。無用の者を見付けて人を騒がせるヤクタイ者。これより直ぐに四条河原へ行って、今度、桂川を流れ下った長持の風説を、芝居に仕組んで興行することまかりならぬと、乞食役者どもへ固く申付けよ」