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さつじんめいろ

殺人迷路

甲賀 三郎

10 (連作探偵小説第十回)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,806 字 · 14 页

青空文庫

そうして、その靴を自宅に置くのは危険ですし、咄嗟に旨く処分も出来ないので、あの店へ預けて置いたんですわ」

「分らんなあ。あなたの云ってる星田と云うのは、山川牧太郎の事でしょう」

「いいえ、違います」

「違う。そんな筈はありませんよ。星田は実は偽名しているので、本当は山川牧太郎、現に殺人の嫌疑で刑務所に――」

「違います。違います」

「そんな筈はない。じゃ、一体誰の事です」

「星田さんは星田さんです。探偵小説家で、あなた方のお友達です」

「じゃ、山川牧太郎は」

「それは恐ろしい男です」

「あなたは今刑務所にいる星田の他に、山川牧太郎がいると云うんですか」

「ええ」

村井の頭はすっかり混乱した。何だか揶揄われているような気持だった。それに反して、津村は少し勢を得て来た。

「じゃ、真弓さん。星田の他に、山川牧太郎と云う男がいて、それがあなたの云う恐ろしい男で、宮部京子を毒殺して、死体を鎌倉に運び、その時に星田に罪を被せる為に、星田の履いているのと同じ靴を履いたと云うんですね」

「ええ」

「それは確かですか」

「ええ」

真弓は力強くうなずいたが、津村は未だ半信半疑だった。もし、真弓の云う通りなら、星田は飽くまで星田で、恐ろしい悪漢の為に無実の罪に落されようとしているのだ!