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さつじんめいろ
殺人迷路
江戸川 乱歩
05 (連作探偵小説第五回)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,041 字 · 17 页
この二三日少し仕事に熱中し過ぎたものだから」
星田は、ハッとしたように顔を上げて、併し、変に舌のもつれた云い方で答えた。
星田の蒼ざめた顔を中心にして、一座が白け渡った。署長も正岡警部も、殺人事件よりは、探偵小説家の病気を気にし出した。
(局外者を犯罪現場に立会わせるのは、これだから困るんだ。素人の癖に死骸なんか見るもんだから、気分が悪くなったのだ。こういう先生は、早く帰した方がいい)
署長がそんな風に考えたのは尤もであった。彼は小説家の機嫌を悪くしないように用心しながら、切に帰宅を勧めた。正岡氏も津村記者も、それがいいと思ったので、結局津村が附添って、星田を東京の自宅へ送り届けることになった。
間もなく、二人は東京行きの二等車のクッションに肩を並べていた。どうした訳か、その箱は非常に客が少く、彼等の附近には、目も耳もなかったので、大声でないしょ話が出来た。
「だが、僕等は犯人を少し買被っていたようだね。パーフェクト・クライムだなんて大きなことを云って、あの態は何だろう。誰でも気附く筈の靴跡や、指紋を平気で残して置くなんて、なってないじゃないか。これは寧ろ世にも珍らしいインパーフェクト・クライムだね」